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県西部はクラスターが少ないから大丈夫?---それは間違いです!


西部保健所の「命を守る業務を優先する」方針について解説します。
最終更新日2022/2/15


「感染者が増えたとはいえ、西部はクラスターが少ないからまだ大丈夫かな?」
「うちの子の保育園で園児や職員の感染者が多くて、クラスターだろうに、発表されていないのはなぜ?」

 様々な声があります。実際のところはどうなっているのか。
西部保健所の業務が逼迫し、クラスター報告に関する保健所の方針をアナウンスする余裕が西部保健所にはないようです。そこで当院が知り得た範囲で、以下に西部保健所の対処方針を解説します。

県西部はクラスターが少ない?

 西部保健所管内(6市1町)からの先月1ヶ月間(2022年1月)のクラスター報告は以下の5件です。

1/13 磐田市 事業所
1/13 袋井市 学校
1/23 磐田市 磐田市立総合病院
1/24 湖西市 福祉施設
1/27 磐田市 福祉施設
(2/1~2/15の半月間は、学校1件、病院・高齢者施設など9件の計10件です。)

 1月のクラスター報告を県のホームページから拾い、だいたい西から東へ並べてみたのが以下の棒グラフです(政令市は除く)。たしかに西部保健所管内(左側の6市1町)からのクラスター報告は少ないです。

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出典 https://www.pref.shizuoka.jp/kinkyu/covid-19-tyuumokujouhou.html


 棒グラフを地図に移したのが、以下の図です。

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 南伊豆あたりの加茂保健所管内からもクラスター報告は少ないですね。そもそも南伊豆(加茂保健所管内1市5町)は、人口も陽性者数もずっと少ないからです。
 なので、人口10万人あたりクラスター件数、陽性者100人あたりクラスター件数を計算しました。下の表です。

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 南伊豆の加茂保健所を見ると、陽性者100人あたりクラスター件数は、1.20件と、東部保健所、熱海保健所に遜色ないことが分かります。それに比べ、西部保健所は、人口10万人あたりクラスター件数、陽性者100人あたりクラスター件数ともに、少なさが際立っています。
 西部保健所のクラスター報告が格段に少ないことは、間違いありません。

なぜ西部保健所のクラスター報告が少ないの?---「命を守る業務を優先しています」

 西部保健所管内では、 5人以上のクラスターにならない、ごく少人数の感染ばかりという特異現象が起こっているのでしょうか?
 いいえ。答えは、クラスターが少ないのではなく、保健所によるクラスター"報告"が少ないのです。

 実は袋井市にある当院の近隣でも1月に保育園クラスターや学生寮クラスター、複数の学校にまたがる部活動大会のクラスターとみなせるものがあったことを確認しています。しかしいずれも県からクラスターとして発表されていません。学校や保育園での、クラスター並みの人数の陽性者の発生は数多く耳に入っています。ある保育園では5人以上の感染者が出た時点で園長が西部保健所に報告されましたが、西部保健所からはとくにその後の働きかけはなく、園医と市の教育委員会との協力で園内感染を終息させたと聞いております。

 西部保健所とやりとりする際に何度か尋ねてみましたが、最近は、「命を守る業務を優先しています」(*注1)という返事が返ってくるようになりました。振り返ると、昨年8月の第5波の際、西部保健所では業務が逼迫し、保健所による濃厚接触者の調査をほぼ行えなくなりました。政府の通達もあり、保健所ではなく地域の医師の判断で同居家族なら濃厚接触者とみなして対応する、学校・事業所での濃厚接触者の調査は学校・事業所の責任者に任せる、という逼迫時の緊急対応に切り替えました。その後第5波が収まった後も、西部保健所はその対応を半年以上継続中です。

 西部保健所による学校・事業所のクラスター報告件数が少ないことをデータで確認してみましょう。下のグラフは 1月のクラスター件数と内訳です。西部保健所と隣の中部保健所は担当管内の人口規模が同じぐらいですが、その差が際立っています。西部保健所では学校・保育園クラスターの件数は1件、それにたいし中部保健所では28件です。
今回の第6波では、地域に流入したウイルスが学校・保育園で感染拡大し、家庭内で子供から大人に広がり、最終的に高齢者施設や病院での施設内クラスター、院内クラスターになる、という流れがありますが、1月感染拡大初期の学校・保育園でのクラスター(棒グラフ緑色部分)を認識して報告することは西部保健所ではほぼ行われなかったことがうかがわれます。

 高齢者施設や病院でのクラスター(棒グラフ赤色部分)の発表数は、西部保健所も中部保健所に遜色ないことが分かります。重症化や死亡のリスクの高い高齢者や入院患者を重視し、高齢者施設や病院でのクラスター(棒グラフ赤色部分)に集中して対応する、という「命を守る業務を優先する」という方針を実行されていることが分かります。

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 2月前半期間のクラスター件数のグラフを見ましょう。2月に入り、どの保健所も感染拡大の終端である、高齢者施設や病院でのクラスター件数の比重が大きくなっています。(ちなみに、2月に入り富士保健所管内では学校・保育園クラスターの報告がありません。富士保健所も西部保健所と同様の方針をとられるようになったのかも知れません。)

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 西部保健所に尋ねたところ、高齢者施設、病院などがクラスターと認定されれば、保健所が必要に応じクラスター対応を支援し、幅広い範囲でPCRや抗原定量検査による拡大検査を行政検査として行う手配をする(場合によってはDMATの介入を手配する)とのことです。逆に言うと、学校クラスターを認定して学級単位の拡大検査を行う余力がないので、はじめから学校クラスターの認定には消極的、ということかも知れません。

 では、最初の問いに戻りましょう。
「西部はクラスターが少ないからまだ大丈夫かな?」---それは間違いです。西部保健所の方針により実際のクラスターよりも格段に少ない件数が発表されています。中部保健所管内と同じぐらいクラスター件数が報告されていておかしくないと思った方がいいでしょう。

 「うちの子の保育園で園児や職員の感染者が多くて、クラスターだろうに、発表されていないのはなぜ?」---学校・保育園・事業所クラスターの認定には消極的で、高齢者・病院クラスター対策に重点化する西部保健所の方針により、学校・保育園・事業所クラスターはカウントされなくなっています。学校・保育園・事業所での濃厚接触者対応などは、保健所がほとんど関与せず学校・園・事業所の責任者にほぼ委ねられています。濃厚接触者対応の積極性に濃淡があるかも知れません。それぞれの責任者には、濃厚接触者の特定、自宅待機など、できるだけ積極的な対応をお願いしたいところです。

 西部保健所が他の保健所と異なる方針をとっていることには、公的なアナウンスが必要でしょう。 地域にクラスター発生が少ないという誤解をうみ、地域住民の警戒心を緩めて感染拡大要因となる恐れがあります。西部保健所の方針の公的な説明を西部保健所、または県にお願いしたいところです。

 また前述のとおり、今回の第6波では、地域に流入したウイルスが学校・保育園で感染拡大し、家庭内で子供から大人に広がり、最終的に高齢者施設や病院での施設内クラスター、院内クラスターになる、という流れがありそうです。感染拡大の火元とも言える学校・保育園クラスターには保健所がほとんど介入せず現場に任せ、火が燃え広がった終端に位置する高齢者施設や病院クラスター対策に集中する戦略は有効かどうか、議論の余地があるでしょう。市中感染が蔓延してしまったら、高齢者施設や病院でのクラスター発生は避けようと努力しても避けきれません。現状では避けられるかどうかは確率の問題です。いったんクラスターが発生すれば高齢者施設や病院には大変な負担がかかり、医療崩壊の要因ともなります。ワクチンによる重症化予防も大事ですが、第7波、第8波とつづく先のことも考えて、感染拡大の火元で感染者数を抑える対策を行政には考えていただきたいと思います。
 
 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

(*注1)
「命を守る業務を優先する」という考え方は、「保健所業務の重点化」として県の専門家会議で公式に提案されているようです。
 第 19 回静岡県新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(要旨) 2022/1/17
https://www.pref.shizuoka.jp/kousei/ko-420a/kansen/documents/19_youshi.pdf